【高知県 仁淀川エリアPR動画】 “究極のブルー編”

木川です。実は年末に、私が運営しているサイトがマルウェアにやられてしまい、その間、いろいろとリニューアルしました。映像祭の公式に、これまでも自分自身の映像へのコメントなどをあげてきたのですが、やはり、それは映像祭の公式ホームページとは分けた方がいいのではないかという考えにいたり、これまでにJWTFFの公式ホームページにあげていた記事などをまとめるサイトとして、このJournal of JWTFFをつくりました。このサイトでは日本国際観光映像祭の審査員などにも依頼して、観光映像の評論を文章として書いていただこうと思います。そして、観光映像に対する視点を多くの方と共有して、よりよい観光映像が今後、日本から生まれるための議論を行えればと考えています。

良い観光映像とはなんでしょうか。

観光映像に取り組みながら、この5年間以上、この問に悩んできました。それは美しい映像でしょうか?それとも、Youtubeで多くの視聴者を得た映像のことでしょうか?しかし、単なる美しさだけでは人に行動を起こさせることはできません。また、Youtubeの再生数を得るために失敗した観光映像が多くあったことも忘れてはいけません。明確な答えはありません。しかし、解答に近いことは見つけることができました。それは、

観光映像は、地域を持続可能に発展させる観光戦略を実現するための映像であること

この考えを持って、一つ一つの映像のあり方を問うことが大切であろうと思います。

さて、第1回として、木川が評論するのは高知県仁淀川流域のプロモーションを行う「究極のブルー」です。先日、発表された第5回日本国際観光映像祭においてもオフィシャルセレクションに選ばれています。

第5回日本国際観光映像祭オフィシャルセレクションリスト

こちらの映像祭では、木川は総合ディレクターという運営側の人間なので、国際ルールで審査員になることはできませんので、映像の採点には関わっていません。なので、木川がここで褒めても、映像祭において評価されるかどうかはわかりません。それは審査員次第です。

でも、実は木川は地域活性化センターの地域プロモーションアワードの動画部門で審査員をつとめています。

地域プロモーションアワード2022 動画部門(第4回)の結果
https://www.jcrd.jp/publications/pamphlet/2022/cat/index.html

こちらを見ていただいたらわかるように、実は「木川剛志賞」に選んでいただけました(ただ、この名前はちょっと、と思うので、審査員賞とかにして欲しいですが。。。)

こちらに対する木川の講評は以下のように書きました。

「究極のブルー」は地域の魅力を伝える点においてもとても効果的な映像ですが、観光視点においても特に優れた映像でした。観光行動は単なる消費行動ではなく、人生のステージにおける”エモーション(感情)”とともに引き起こされるものです。感情が人に動機を与えます。しかし、多くの観光誘致では“スペック”で魅力を語り、人々の感情にうったえかけることはできていません。「究極のブルー」では一人の女性が感情に動機付けられ旅にでます。さらに感情と風景が何度も交差し、そのたびに視聴者は映像にどんどんと引き込まれ、仁淀川の美しさに実感を持ちます。心にうったえかける素晴らしい映像でした。

文字数の制限があったので、十分に書けなかったのですが、この映像の素晴らしさはストーリーテリングに優れているところです。水の美しさ、海の美しさは確かに映像で届けたい観光地の大事な資源ですが、映像にするということは世界と比較可能な形にすることを忘れてはいけません。確かに美しいですが、それは世界一綺麗と言われている海よりも綺麗なのですか?それは世界一美しい川よりも綺麗なのですか?それを問われるのです。

これがスペックで語る観光地の魅力です。しかし、実際の観光体験では、偶然が生み出す感動があり、それがその観光地に対する愛着となり、リピーターとなるきっかけとなります。それは比較不可能な、その観光客だけの体験です。わかりやすい言葉で言えばオンリーワンな体験です。この「究極のブルー」は、それをわかっている映像です。

また、私のように研究者をやっていると、あまり使えない言葉が「感情」です。科学的とは遠い言葉だからです。その一方、科学と近い言葉がエビデンスやデータです。この金額なら多くの人が満足してくれる。この場所にはすでにこれだけの人々がやってきている。このようなエビデンスやデータで観光は導かれていきますが、それが本当に人を感動させることになるのでしょうか。その一方で、この「究極のブルー」はクリエイトの力で、人を引き込み、そして観光地に対する愛情を育んでいます。そんな秀逸な映像である、と私は思います。この映像をもっと多くの人に見てほしい、と思いました。また、こういう映像が日本各地から生まれてほしいです。

執筆者プロフィール

木川剛志

日本国際観光映像祭総合ディレクター
和歌山大学観光学部教授

1976年京都市生まれの大津市育ち。1995 年京都工芸繊維大学造形工学科入学。在学時よりアジアの建築、特にジェフリー・バワに興味を持ち、卒業後はスリランカの設計事務所に勤務する。2002 年UCL バートレット大学院修了。2012 年に福井市出身の俳優、津田寛治を監督として起用した映画「カタラズのまちで」のプロデューサーをつとめたことから映画製作に関わるようになる。監督としては2017 年に短編映画「替わり目」が第9 回商店街映画祭グランプリ、2021 年制作ドキュメンタリー「Yokosuka1953」が東京ドキュメンタリー映画祭長編部門グランプリとなり、現在全国順次公開中。観光映像では須藤カンジを監督に起用しプロデューサーと撮影をつとめた「Sound of Centro」がART&TUR 国際観光映像祭でポルトガル観光誘客(都市)部門最優秀作品賞。2019 年より日本国際観光映像祭実行委員会代表、総合ディレクターをつとめている。

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