JWTFF2023, 撮影技術賞(ART&CRAFT)講評

JWTFF2023より、CIFFTの基準に従って、撮影技術賞も授与することにしました。これは他の賞がストーリーテリングや映像効果などを指標に審査をするのに対して、撮影技術に特化した部門です。また、こちらに関しては、他の賞と審査員を分けることも国際基準です。JWTFF2023は写真家の相原正明さんにこの部門の審査をおねがいしました。講評が届きましたので、公表します。

目次

相原正明さんの講評

1位 “Jiwa Jagad Jawi”

 すべてのシーンが絵画のようだった。しっかりした絵コンテがあると感じた。光と影、そして現地の空気感をよく捉え再現している。きれいなだけの風景 おいしい料理 楽しい現地の人とのふれあい。それはどの作品も訴えているので、その2歩 3歩 奥に切り込まないと人の印象に残るのは難しい。スチールの世界では“キラーフォト”と呼ばれる言葉がある。一度見たら忘れない絵 それで見る人の心を一撃でとらえる。動画という時系列で訴求していくと一瞬に凝縮することを忘れがち、あるいは流れに頼りすぎている。昔の映画監督たちはよく「いい写真が撮りたい」と言っていたのを見たり読んだりしたことがある。つまり静止画、写真が2時間つながったのが映画。海外での映画のエンドタイトルでは、撮影もしくはカメラマンXXXXではなく、Photography XXXXXとなっている。Photo graph 光で描くからきていることをよくかみしめている。最近の動画は、光で描くことを忘れている気がする。昔の小津 黒沢 野村芳太郎 あるいはゴジラの本多猪四郎監督はとても絵が心に残っている。最近の海外ではLIFEのベン・ステイラー監督が絵作りでは心に残る。特に逆光とフレアーの使い方が上手な印象だ。
 デジタル処理 ドローン それだけに頼らない、いかにレンズで光を切り取り、一瞬の絵を作りあげたかで、審査の基準とした。そして多様な光をいかにとらえ操る光と色の魔術師として撮影するPhotographerの力を見て審査した。 
 その結果 光とインドネシアの空気感を見事にとらえつつ、かつ多彩な視点と光のと絶え方を見せていただき、飽きない映像であったので文句なく1位 さらに付け加えるならば鑑賞してから1日たっても各シーンが明確に脳裏に焼き付いていることがあげられる。脳裏に焼きつくからこそ、他の地域との差別化に成功して、旅してみたくなることにつながると考える。

追加
 画面のアスペクト比を上手に使いきっているフレーミングと絵作りと感じた。

2位 NIIGATA GASTRONOMY

 料理のシーンはとても美しかった。盛り付けるところ、完成品を俯瞰で流して見せる視点は今回の作品群の中で料理の表現では、迷わず1位であった。ただ残念なことが2点。
 1つは風景のドローンでのシーンがほぼすべて同じライティングであったこと。心に残るイメージとしては差別化ができない。撮影時間 光の捉え方をエリアごとに変えてほしい。
 第2にインタビューでももう少し光をとフレーミングを考えてほしい。登場人物が平面的になって残念。

 あと細かいところに神経が行っていない点が1つ。手のアップでピップエレキバンが映り込んでいる。かなり目立つので神は細部に宿ることを考えてほしい。以上がクリアーであればグランプリだった。

3位 An inch from the sky

 ストーリーは最高。キャンプのシーンにもう少し臨場感が欲しかったライティングとレンズワークがあと1歩。あと星のシーンにもう少しバリエーション。でも月の映像が効いている心に残るストーリー。でもデスティネーションがどこかということが心に残らない。

3位 Otentik Itu Perlu Waktu

 1位のインドネシアと甲乙つけがたい。やはり1分間でありながら光と影が心に残る。バリの神秘性が十分訴求。湿度感をうまく味方につけて撮影している。1位にするかかなり悩んだ撮影完成度。

5位 The islands that extend life

 イントロとエンディングの絵作りが面白い。よくあるビーチものと差別化できている。
 ただもう少し寄りの映像 長玉でボケ味を使った絵が、要所要所で入れるとロングの映像が生きてくる。1本調子で、せっかくの良い映像がメリハリがなく生きてこない。

執筆者

相原正明

写真家
1958年東京都出身。日本大学法学部新聞学科卒業。学生時代より北海道、東北のローカル線、ドキュメンタリー、動物、スポーツなどを撮影する。卒業後、広告代理店に勤務。1988年、8年間の代理店勤務ののち退社。オートバイによるオーストラリア単独撮影ツーリングに向かい、彼の地にて大陸とネイチャーフォトの虜になる。撮影ではホテル等は使わず、必ず撮影場所でキャンプして大陸と一体に成ることを、心掛けている。日本人としてはじめてオーストラリアでの大型写真展をオーストラリア最大の写真ギャラリーウィルダネスギャラリーで開催して以来、世界各地で写真展開催。現在オーストラリア タスマニア州政府フレンズ・オブ・タスマニア(親善大使)の称号を持つ。2008年には、世界のフォトグラファー17人を集めた「アドビフォトアドベンチャー」に日本代表として参加した。アサヒペンタックス登録プロ作家、ニコンプロフェッショナルサービス会員。2008年中日新聞広告賞 体感するオーストラリア(オーストラリア政府観光局)にて受賞。

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