今年からプロジェクト部門賞も開設しました

 JWTFFディレクターの木川です。3月14日から16日まで日本国際観光映像祭を開催しました。年末の報告、新年の大学業務の開始、などがあって、なかなかに報告ができていませんが、おいおいと載せていきます。今回は、今年から始めたプロジェクト部門について紹介します。

プロジェクト部門

 JWTFFでは国際部門、日本部門にそれぞれ別の審査員を配置し、それらを審査委員長が映像祭の理念と合わせて最終的な賞の判断をするという形式を取っています。審査員は観光学の専門家や映像作家、SDGsや文化観光の専門家などです。応募の際には、観光映像の概要、その映像の目的やゴールなどを書いてもらうのですが、やはり映像そのものの評価で審査員は点数をつけます。しかし、観光映像は、観光戦略のツールであることを考えれば、それだけでは不十分な場面があります。これについては審査員の方からも問題が指摘されてきたので、今年の日本部門では「プロジェクト部門」を開設しました。ちなみに国際観光映像祭のディレクター同士でも、この問題は共有されていますが、その抜本的な解決はまだなので、それに対して、実験的にJWTFFが行ったところもあります。

 プロジェクト部門の理念を以下のようにしました。

日本国際観光映像祭は、第5 回大会より、プロジェクト部門のコンペティションを開始します。これは観光映像が観光のプロモーションのプロジェクトや企画と密接に連動していることを鑑み、観光映像のみを対象とした現行のコンペティションでは十分に測ることができていない映像にも脚光を浴びせ、よりよい観光プロモーションにつながることを期待して行います。


審査の方法

 日本部門に応募のあったもののうち、映像自体の評価も高く、かつプロジェクトとの連動が明確であり、またプロジェクトの概要が情報が公開されている作品、6作品をディレクターが選出しました。それらをJTB総合研究所の山下真輝さん、JR西日本コミュニケーションの原尚樹さん、神戸松蔭女子学院大学の青谷先生の3名に審査をしてもらいました。その結果、3つの映像に賞が授与されることとなりました。

プロジェクト部門受賞作品

タイトル(映像リンク)製作・著作プロジェクトサイト
最優秀賞with Nature ” The Grace of Japan, TOCHIGI “栃木県国際観光推進協議会https://www.tochigi.global
優秀賞2022 KUSHIRO Hokkaido Japan in 8K – 釧路 [summer]釧路市https://en.kushiro-lakeakan.com
優秀賞Timeless Journey in Otsu滋賀県大津市https://otsu.or.jp/walkotsu/ja/

 既存の主要部門でも受賞した作品もありますが、映像を中心とした受賞作品とは異なる作品となりました。これは映像祭の主催者としても今後、審査のあり方も含めていろいろと考えなければならない結果となりました。観光戦略のための観光映像とはどのようにあるべきなのか、それに対しての課題となりました。

 最優秀賞となった栃木県のwith Nature “The Grace of Japan, TOCHIGIは2分の映像に映像美を込めた素晴らしい映像です。この映像についてはプロジェクト部門の部門審査委員長をつとめていただいた、(株)JTB総合研究所の山下真輝さんからは以下のようなコメントをいただいております。

栃木県は日光国立公園や世界遺産・東照宮をはじめ、日本国内のみならず、世界の人たちを魅了する素晴らしい自然や文化資源を持つ県ですが、このたび出品された映像は、栃木県の持つ本質的な価値をよく表現されているものでした。このたびの「プロジェクト部門」では、観光映像そのものだけではなく、目指しているゴールの実現のために、どのような戦略に基づいてプロモーション展開がなされているのか、そして観光映像が効果的な役割を果たしているか、一連のマーケティング活動が評価の対象です。このたびの栃木県の取組は、「新とちぎ観光立県戦略」において掲げられた課題解決にむけて、栃木県の認知度向上を図り、外国人旅行者の宿泊人数を増加させるという目標を設定した上で、「The Grace of Japan, TOCHIGI」というブランドコンセプトが観光映像で表現されています。ホームページでは、そのコンセプトが様々なテーマで表現されており、栃木県のブランドイメージ向上につながる仕掛けになっています。国内外のオンライントラベルエージェントや航空会社との連携も図っており、最終的な出口戦略も考えられていると思います。今後は、訪れた外国人旅行者に感動してもらえるこのたびのコンセプトに基づいた体験・アクティビティの予約や参加者の声がどんどん拡散される仕組みになっていくことで、栃木県の目指すゴールの実現にもつながってくるのではないかと思います。今後の栃木県のブランド展開に期待したいと思います。


㈱JTB総合研究所
山下 真輝

プロジェクト部門最優秀作品

 来年もまた3月に次回の開催を予定しており、準備を進めています。日本の観光のために観光映像がどうあるべきか、これからも模索していきたいと思います。実験的に行ったプロジェクト部門ですが、今回の結果を踏まえて、拡大していく方向で考えていきます。

執筆者

木川剛志

日本国際観光映像祭総合ディレクター
和歌山大学観光学部教授

1976年京都市生まれの大津市育ち。1995 年京都工芸繊維大学造形工学科入学。在学時よりアジアの建築、特にジェフリー・バワに興味を持ち、卒業後はスリランカの設計事務所に勤務する。2002 年UCL バートレット大学院修了。2012 年に福井市出身の俳優、津田寛治を監督として起用した映画「カタラズのまちで」のプロデューサーをつとめたことから映画製作に関わるようになる。監督としては2017 年に短編映画「替わり目」が第9 回商店街映画祭グランプリ、2021 年制作ドキュメンタリー「Yokosuka1953」が東京ドキュメンタリー映画祭長編部門グランプリとなり、現在全国順次公開中。観光映像では須藤カンジを監督に起用しプロデューサーと撮影をつとめた「Sound of Centro」がART&TUR 国際観光映像祭でポルトガル観光誘客(都市)部門最優秀作品賞。2019 年より日本国際観光映像祭実行委員会代表、総合ディレクターをつとめている。

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