日本国際観光映像祭ではマネージャーとして関わった松原かおりです。映像祭全般の運営を行いました。2024年もART&FACTORY JAPANを開催しました。これは開催地や、映像祭と縁のある自治体と一緒に、即興として観光映像を制作するコンペティションです。今年の映像祭は北海道釧路市阿寒湖で開催されたので、阿寒湖ファクトリーと、これまでも一緒に行ってきた与論町でのファクトリーと、2箇所で開催しました。私は与論ファクトリーのコーディネートを担当しました。
以下のような3組の撮影に同行しました。
与論ファクトリー2024 撮影工程
与論ファクトリー | 日程 | 主な撮影場所 |
粂田監督 | 2024年1月26日(金) 〜2月2日(金) | 高橋さん家・赤崎海岸・原さん職場、原さん友人宅・MEEDAFY’S YUI HOSTEL and COFFEE地主神社 など |
宮田監督 | 2024年2月1日(木) 〜2月4日(日) | ウドノスビーチ・寺崎漁港・鳩の池・大金久海岸・サトウキビ畑・アジニッチェー神社・味咲・居酒屋やす など |
景山監督 | 2024年2月17日(土) 〜2月20日(火) | 茶花海岸・サザンクロスセンター・地主神社 大金久海岸・ツリーハウス・与論高校・プリシアリゾート・展望台 など |
与論ファクトリー参加クリエイター・作品
粂田 剛 監督 「与論観光記」
1969年愛知県生まれ。
東京都立大学人文学部社会学科文化人類学専攻卒業。フリーの助監督として原将人『20世紀ノスタルジア』、矢崎仁司『ストロベリーショートケイクス』、松井良彦『どこに行くの?』などに参加。その一方で、企業PR映像や教育映像、テレビ番組のディレクターとしても仕事を続ける。主な演出作品に『フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 第三夜 クローン人間の恐怖』(NHK BSプレミアム)、『珍盤アワー 関根勤の聴くメンタリー!』(BSフジテレビ)『ザ・ノンフィクション シフォンケーキを売るふたり』(フジテレビ)などがある。
粂田監督は長年ドキュメンタリー番組の制作に関わられてこられ、そして監督された映画「なれのはて」が東京ドキュメンタリー映画祭、長編部門グランプリに輝くなど、人々のライフストーリーを緻密に描くことで知られた監督です。
今回、与論ファクトリーのプロデューサーとして与論ファクトリーを任せてもらった時に、木川ディレクターと相談して、粂田監督を紹介してもらった。
粂田監督については経歴や代表作の「なれのはて」のドキュメンタリー作家としての粂田監督が与論を映像で表現する時、どのような視点で描くのか事前に企画書を頂きました。
与論島に“光”を見に行く(仮題)
【観光】=光を見る、と書く。では、“光”とは何か?
与論島にはどんな“光”があるのだろう?
珊瑚礁が作り上げた風景、史跡、食べ物、アクティビティ…
観光映像を撮影するために与論島を訪れたドキュメンタリー映像作家・粂田剛が島中を歩き回りながら、さまざまな島の魅力に触れていく。
そして、粂田が最終的に見つけた“光”とは、与論島で生きる“人”だった————
和歌山大学館工学部の木川剛志教授と共に、事前打ち合わせとしてZOOMで初回打ち合わせの際に、この与論島に光を見に行くというテーマが考えられていて、密着とキュメントを2名ほど想定され、その他島の人との出会いを中心に、徒歩で島を巡りながら撮影を進めるというドキュメンタリー作家ならではの手法で与論ファクトリーに臨むことになりました。
合計、53名。島外の人5名。
粂田監督が実際に取材し撮影した人数です。打ち合わせ時からできたら50名くらいは撮りたいなとおっしゃっていていましたが、1週間の日程で目標を達成されました。
密着ドキュメンタリーには、2名男女が選ばれた。島人の高橋さんと、移住者の原さんに白羽の矢が当たり、当初予定していた「与論島に住んでいる人」の地域との関わり方や、与論島に魅了される人の眼差しにフォーカスした撮影が行なわれた。また、粂田監督の足で稼いだ数多くの島人たちの笑顔が、ドキュメンタリーの背景に「この人たちがいる島」として映し出され、粂田監督のドキュメンタリー作家の視点で見出された与論島の魅力が見る人にダイレクトに伝わる作品に仕上がったと思います。
宮田 耕輔 監督「予期せぬ出会い〜Unexpected Encounter〜」
地域情報誌「月刊ウララ」の編集長。ボクサーパンツ専門店「ラーナニーニャ」・「MAGO GALLERY FUKUI」を運営。福井駅前短編映画祭代表。ふくいまちなかムービープロジェクト代表。毎年åムービーハッカソンを開催している。
福井県出身
1971年生まれ
映像——反保シュウジ
写真——Eito Mars
クリエイティブ集団「esstudio」の代表(EitoMars)と共同代表を務める。反保氏は福井県のテレビ局にてディレクターとして番組制作を手掛けるほか、映画の撮影も積極的に行なっている。Eito Mars氏は、彼に撮影をしてほしいと世界中の人が訪れてくるほど、光と表現のセンスが非常に高いフォトグラファー
人に会いに行く島。
宮田組一行は、3泊4日のスケジュールで初日の午後与論島に到着し、ゲストハウスKAIを拠点に撮影場所は実際に島を巡りながら、人の温かさに触れる旅を想定した企画を元に、「与論の人に出会う旅の中で、物書きの宮田氏が与論で感じ綴られた言葉と、Eito Mars氏が切り取った与論島の美しい情景、その旅の様子とまた別の視線で捉えた反保氏の映像がMIXされて作り出される観光映像」を制作するという内容で撮影を進めていきました。
宮田組はレンタカーで島を巡りながら、ウドノスビーチで与論島産みずレモンを栽培している島人から、観光客があまり知らない夕日スポットを教えてもらって撮影したり、粂田監督の撮影にも協力を頂いていた肥田みちよさんが行っているテントサウナを体験したり、朝日のシーンを撮影に訪れた鳩の池では、三線と法螺貝で観光客をもてなす島人に出会うなど、与論の人の出会いが繋がりながら、撮影がすすめられました。その島の人との出会いの体験を元に、実際に宮田監督が紡いだ文章が作品内で使用されるテロップに流れ、その心象風景を納めたスチールカメラの写真と実写が映し出される映像作品として仕上がりました。いかがテロップに流れる宮田監督が与論島で感じ、生み出された文章です。
予期せぬ出会い〜Unexpected Encounter〜
風がなびく。
波音が遠くで響く。
さとうきびの畑は
一斉に葉を揺らす。
湿度感のある空気。
心地よい風が身を包む。
ただそれだけで、
旅人は心奪われる。
何もない島。
でも何もないなんて
何一つ感じない。
この島にはたくさんの
愛に溢れている。
喜びの島。
人を受け入れる島。
人を愛する島。
こんなに居心地のいい
島はあるのだろうか。
この島に目的などいらない。
気が付けば、誰かに出会う。
誰かに出会えば話が弾む。
気が付けば、誰とも仲良くなる。
おもてなしなんて、
陳腐な言葉は必要ない。
当たり前の島人たちを、
装飾する言葉はいらない。
welcome,welcome.
何度も語りかけてくる言葉。
人も海も自然も文化も、
何度も語りかけてくる。
島人の誰もがこの島を
離れていく。
しかし、最後は戻ってくる。
この島の空気が、
人々を癒してくれるから。
「もう出たくない」。
何度聞いたことだろう。
何にも縛られず、
何にも受け入れる、
島の魅力を島人は気付いたから。
「離れたくない」。
何度思ったことだろう。
このままでいい。
このままがいい。
島人の愛が包み込んでくれるから。
人は人に会いに旅に出る。
出会った人、
仲良くなる人、
会いたくなる人。
人と人がつながっていく。
予期せぬところでつながっていく。
予期せぬ出会い。
それがこの島最大の魅力。
この島の名は、
与論島。
景山 直恵 監督 「私のわいたんDAYS ヨロン島」
デザインコンサルタント・グラフィックデザイナー
アーチザン&パートナーズ代表
福井工業大学大学院 修士(工学)
代表作に「Paper glass(ペーパーグラス)」のコンセプト、ロゴマーク、パッケージ、セールスプロモーションツールなど一連のアートディレクションとデザイン制作などを手掛け、2013年グッドデザイン賞BEST100に選出され、さらにそこから選ばれる「ものづくりデザイン賞特別賞」を受賞。そのほか、福井県政策デザインアドバイザーとして、県庁各課と県内クリエイターとのワークショップを開催。デザインワークのほか、コンサルティングやものづくりセミナーなど、県内外の企業経営者にデザインの重要性と効果的な活用ノウハウをわかりやすく啓発する活動を行っている。
撮影:小川浩之
Photo&Movie Create Augusta 映像作家
各種写真撮影(広告写真、雑誌、各種記念撮影、料理撮影、ポートレート、家族写真等)
各種映像制作(会社案内映像、PV、観光映像、MV、CM制作等)
各種空撮(写真、映像)ドローン撮影
エルマガジン Meets Regionalや、講談社・関西一週間、ぴあなどの広告写真撮影や、
企業の PV、観光映像、MV、CM制作を手掛ける日本全国で活躍する映像作家。
福井に住む高校生(結理)が与論島の高校生と島を巡る旅
「与論島の高校生が普段よく行く場所や、おすすめのポイントに連れて行ってもらう。ふたりがエモいと思う場所なども紹介。自分たちの暮らしや普段思うことの違いや共通点、これからのことやお互いの悩みなど、福井と与論島の高校生のリアルを語りながら与論島を案内する。」という企画内容を元に、事前に撮影許可を取得し、撮影に挑みました。
景山監督は、元々グラフィックデザイナーであり、デザインコンサルを主な生業にされていますが、監督としては初の取り組みで、映像作家の小川氏とは仕事を依頼する側として繋がりがあり、お二人の感性を合わせた作品作りとなりました。
また出演者の女子高生、結理さんは景山監督の娘さんで、景山監督が大のリゾート好きから幼い頃からリゾート地は度々訪れている観光者としても経験値の高い生徒さんが、島の女子高生琉乃(るうの)さんとの出会いで、与論島に降り立つ前と後の心境の変化、また島人の琉乃さんのこれまで与論島に住んでいて感じたことのなかった島の魅力の気づきなどが得られた表情の変化などが作品の中でどんどん豊かに表情が変わる様など、女子高生が巡る島旅だからこそできた表現になったと思います。
私のわいたんDAYS ヨロン島
「ワイタンデェ」=「すごい!」「やばい!」などの感情を表す与論の方言を使用したタイトルで、作品の中で高校生たちがしきりに「やばい!やばい1」と思わず口に出していた感動の言葉を、島人に教えてもらった子をがきっかけでタイトルにも採用しました。
ART&Factory Japan 観客賞受賞
今回、与論ファクトリーの3作品の中から、景山直恵監督「私のわいたんDAYSヨロン島」が日本国際観光映像祭のART&Factory Japan部門で観客賞を受賞することができました。この観客賞は、日本国際観光映像祭の運営費のサポーターを募集するクラウドファンディングの返礼品の一つとして、ART&Factory Japanのファクトリー作品に対し、投票権を得られるというプロジェクトに賛同いただいた支援者から投票された結果と、審査員の意見から選ばれました。
与論ファクトリーの意義
今回からこの与論ファクトリーに、プロデューサーとして参加させてただきました、日本文理大学情報メディア学科の松原かおりです。この度の与論ファクトリーに参加したことで多くの学びがありました。
与論島の魅力を映像作家の視点から伝える観光映像制作は、すでにこれまで多くの受賞作を生み出し、海外でも高く評価されるなど、与論島が観光映像という世界の中でもリードする存在となっております。
また観光映像のあり方を模索し議論し合う場としての、日本観光映像祭の目玉となるプロジェクトとしてART&Factoryは大きい役割を占めてまいりました。
今回の与論ファクトリー及び阿寒ファクトリーに参加された5組からは口ぐにに「ファクトリーに参加して良かった。」また「参加したことで得られた経験を自身の今後の作品作りにも活かすことが出来る。」「クライアントベースではない観光映像こそ人の心が動き、そこに映し出された人や物事に触れたいと感じさせてくれる作品が出来る。」など、このART&Factory Japanの取り組みを大変高く評価いただきました。
この与論ファクトリーの取り組みを継続いただき、映像作家の視点で地域の魅力発見につながる観光映像制作の場を与えていただき誠に感謝申し上げます。
ART&Factory Japan広報活動
MOTION GALLERY
与論島とART&Factory Japanの関わりをご紹介する記事をクラウドファンディングサイトMOTION GALLERYを中心にし広報活動を行いました。以下MOTION GALLERYにて与論ファクトリーについて取り上げました記事リストです。
①の記事で「ART&FACTORY JAPAN」についての紹介や、過去の与論ファクトリーで制作された与論島の観光映像は、与論町が運営する「ヨロン島」YouTubeチャンネルにてご覧いただけることもこの記事でご紹介いたしました。②〜④の記事で今回参加された映像クリエイターが作品にかける思いや撮影の様子などまとめた記事です。⑤〜⑦の記事にはそれぞれ映像クリエイターがクラウドファンディングでご支援いただく皆様へのメッセージを与論島で撮影し記事掲載しました。
①与論ファクトリーではお世話になります。松原です。
②「なれのはて」の粂田剛監督が与論ファクトリーに参加
③福井を描いてきたライターが、与論島で人生を考える旅
④福井の景山直恵さん。娘と一緒に南の島のすごさを知った旅
⑤「なれのはて」の粂田監督からのメッセージ
⑥ファクトリー投票権は13日まで。与論から宮田監督のメッセージ。
⑦いよいよ明日開催!ファクトリーの投票は明日まで。
景山監督からのメッセージです!
新聞掲載記事
ART&Factory Japan にて観客賞を受賞した景山直恵監督とカメラマン小川浩之さんが、日刊県民福井で取り上げられ、誌面にART&Factory Japanで「鹿児島・与論島の魅力描く」観光映像作品が制作されたことも広報されました。
執筆者プロフィール
松原かおり
日本文理大学情報メディア学科准教授。
福井駅前短編映画祭副代表。
地域デザイン・地域ブランディングについての研究を中心に、地域資源を活かした暮らしの記録として映像作品を制作している。博士前期課程で制作した「「この場所に来れば、誰かに会える。」限界集落A43(福井市芦見地区)のSDGsローカルアクション」は、第2回SDGsクリエイティブアワードで大賞(学生部門)受賞。以後、福井市にある限界集落を研究対象エリアとして映像制作を続けている。
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