日本国際観光映像祭にとって、とても悲しいニュースが台湾から届きました。
2019年に開催された、第1回日本国際観光映像祭でのアジア部門グランプリから始まり、今年の3月に開催された第7回日本国際観光映像祭でのアジア部門グランプリまで。台湾の素敵な風景を、美しい楽曲と共に届けてくれた、サンディさんが亡くなったという連絡がサンディさんの事務所から届きました。
NK/T細胞リンパ腫という、希少な病気と闘病されておられましたが、残念ながら亡くなられてしまいました。
素晴らしい歌手であり、フィルムメーカー。その才能を惜しむ声が世界各国で広がっています。

台湾で生まれ、そしてカナダで育たれ、日本への留学経験もある才女。その彼女が優しく、コミカルに、そして誠実に台湾を歌った曲。この曲は日本語で、半年暮らした日本の友人に向けたメッセージだったのかもしれません。
そんな彼女と私が始めて会えたのは、映像祭で。
2019年に開催した、第1回日本国際観光映像祭。サンディさんが作った、屏東を紹介する観光映像。アジア部門でのグランプリでしたが、実は映像祭全体のグランプリに推した審査員も多かったのです。
“誠実”という言葉が、まさに彼女にふさわしいものでした。本当に丁寧に優しく、屏東の魅力を楽曲で伝える。何度も何度も、次の彼女の映像を授業で紹介しました。こういう映像が日本にも必要だ、と。
第1回のファイナリストに、彼女の「海と光」を載せた時、それまで閑散としていた日本国際観光映像祭のホームページは突如とアクセスの嵐。台湾、日本で応援されてきた歌手でした。そして、授賞式の模様を、屏東のFacebookで流すと、一時、8万人のアクセス。映像祭の可能性を信じた瞬間でした。
次の日の台湾では、20社以上の新聞社がこの受賞を取り上げてくれました。

そして、もう映像祭をこれ以上は開催できない、と悩んだこともありました。体力も予算ももう続かない。最後ならば、と、地元滋賀県大津市で開催した、第5回日本国際観光映像祭。そこにも、サンディさんは素敵な観光映像を応募してくれました。
先の大戦で日本人が引き揚げる時に船に乗った街、基隆。その基隆の魅力を伝える映像でした。「24時間基隆」この映像は、再び、日本国際観光映像祭で受賞。サンディさんも大津市まで駆けつけてくれて、授賞式に参加してくれました。こういう素敵な映像を紹介するための映像祭、をなんとしても続けていかなければ。そういう勇気をもらえました。

この「24時間基隆」は日本国際観光映像祭と連携している世界各国の観光映像祭にも出展。多くの受賞を重ねました。日本国際観光映像祭のスタッフが、ポルトガルで、その喜びを聞きました。
そして、今年の3月に開催された第7回日本国際観光映像祭にも新たな世界の映像を届けてくれました。
日本国際観光映像祭で、アジア部門グランプリ。そして、世界各国の映像祭から、受賞のニュースが届いている最中でした。

台湾に行く予定でした。そして、グランプリの賞状や賞品を渡す予定でした。しかし。
彼女の訃報が届きました。

まだまだ若い。それも希少な病気での逝去。悲しい。言葉が見つかりません。
私はずっと、彼女のファンでした。歌のファンでした。映像のファンでした。
彼女の曲とその美しい映像、誠実な心を持ち続けた彼女の笑顔は、永遠に消えることはありません。
彼女の最後の作品となった「Travel with You」です。
様々な人たちが台湾を旅します。もちろん、その中にはサンディさんの姿もあります。人は旅をします。
サンディさんは、旅の魅力を世界に届け、そして、この世界を美しいものへと変えてくれました。
そして、また、彼女は、私たちの手が届かないところに旅に。
いえ、私たちもいつかたどり着く、“その場所”に旅立たれたのです。彼女の旅は続きます。

サンディさん。
あなたの楽曲、映像はとても澄んだ、あたたかいものでした。
私も映像制作の現場にたずさわり、多くの映像作家と付き合ってきた経験から、
何かをつくる、クリエイトの現場が、簡単じゃない場所であることを知っています。
おそらく、あれだけの作品をつくられたのです、現場では、様々な葛藤があり、意見の対立があり、
予算の問題があり、納期の問題があったことでしょう。大変だったはず。
それでも、あなたの映像には、それらを全く感じさせない、やさしさがありました。
そこにはあなたが台湾を愛する愛情、そして魂の美しさがあったのでしょう。
彼女が紡いだ、私に届いた作品の多くは「観光映像」です。
そこには、美しいものを誰かに見せたい、共有したい、そういう他者への気持ちが込められていた。
その気持ちは、多くの人たちに対立よりも融和、怒りよりも赦し、そして安心を与えていました。
素晴らしい映像だけが、私の目に届くところには残りました。
そして、それは今も私に、社会に優しくありたい、という勇気を与えてくれています。
会えないこと。お話しできないこと。とても寂しいです。悲しいです。
ありがとうございました。
木川剛志
ディレクター, 日本国際観光映像祭
In Memory of Sandy HXM — Her Journey Continues


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