日本国際観光映像祭が目指していること
観光は、疲弊している地域の振興、世界の人々の相互理解、そして私たち個人に生きるための多くの学びを与えてくれるものです。
世界的なパンデミックが落ち着いた現在、訪日客数(インバウンド)は急速に回復しています。もちろんこれは好ましいことなのですが、その一方で私たちの生活はますます厳しいものとなっています。人口減少、世界的なインフレの中での円安の進行、IMFは日本のGDPが世界で4位に後退することを予測しています。 観光が海外からの富裕層を求める一方で、私たちに窮屈な生活を強いる今の観光に不満を持つ人も増えているのも事実です。
観光とはなんでしょうか?政府が観光に期待することは日本経済の復活、特に地方都市の振興のための方策としてです。もちろんそれは正しいことですが、観光はそれだけでしょうか?この不確実な時代、私たちは生きる活力を旅の中に求めます。素敵な人々との出会い、自然の美しさに心を奪われる、街の物語が私たちの見る世界を広げてくれる。そして、観光は私たちを“自分たちの場所”から“他者の空間”へと誘います。知らなかった他者の世界観と触れ合うことになります。観光は異なる文化の相互理解につながります。現在、世界では戦争が続いています。平和な世の中のために、観光が果たす役割は大きいのです。
つまり観光は私たちのものなのです。確かに「業」として疲弊した日本を振興する役割を担う「観光」もありますが、人間として生きるために必要な旅、生きるための活力や学びを得るための「観光」もあるのです。
私たちはこのような視点で「観光」を捉えています。その上で観光映像のあり方を議論してきました。観光地の情報、魅力を伝えて誘客する映像、観光地をよりよく楽しむための紹介映像、旅そのものを楽しむVlogなど、これらをまとめて私たちは観光映像と呼んでいます。「業」としての観光映像ではDXの方向性、デジタルマーケティングのあり方を議論してきました。その一方で「平和」の観光映像として文化観光の位置付けもまた観光映像から読み解けることです。そして 映像の「人の感性に直接語りかける」という特性から「人生」を語る映像を多く発掘し、発信してきました。
ここで私たちの映像祭が製作した滋賀県高島市の観光映像「葦鯉高島」を紹介させてください。昨年の映像祭で開催したコンペティション:ART&FACTORY JAPAN(以降、ファクトリー)で秋田県の映像制作チームOutcrop Studioが作った映像です。
この映像は滋賀県高島市針江地区にある川端(かばた)と呼ばれる 地域の伏流水とその水と共に生活してきた地域の文化を紹介する映像です。針江地区はメディアでも取り上げられ有名ではありますが、観光資源として大々的に誘客が期待されているわけではありません。すべては住民の日常です。しかし、この映像から人々は地域の豊かさを知り、実際に訪れた人は何かを学んで帰っていきます。「業」としての観光映像ではありませんが「平和」と「人生」を考えさせる秀逸な観光映像です。この映像はスペインの国際観光映像祭で受賞しました。そして、この映像は地域の人々に愛され、地元で活用されています。
日本が観光立国を宣言したのは2003年のことです。それよりもずっと前から海外にはフランスやスペインといった観光で生きていくことを国策として選んできた国がたくさんあります。それらの国では観光映像を専門とする作家も育ち、 彼らが作る観光映像には「平和」や「人生」の言葉、ストーリーが込められています。ところが日本の観光映像の多くはまだまだ「業」の中だけに閉じています。観光映像は商業CMとも映画とも違います。この分野の国内の映像作家を育成する必要があります。
この育成のために日本国際観光映像祭(JWTFF)は2019年から始まりました。2020年にUNWTO(国連世界観光機関)が認定する国際観光映像祭ネットワークCIFFTに正式加盟し、アジア唯一の構成映像祭として、日本の映像だけではなく、アジアの観光映像を世界に紹介する役割を担っています。
今年の第6回日本国際観光映像祭は、北海道釧路市阿寒湖アイヌコタン、 イコロシアターを会場に開催します。テーマは「美しき人々、生きる学びの空間へ」です。映像祭では開催地、阿寒湖のストーリーを見出し、それを世界に届ける映像製作とその発信も行います。
第6回日本国際観光映像祭
映像祭は2024年3月13日から15日まで開催します。映像祭はおもに三つの事業から構成されます。
まず 「優秀な観光映像の表彰」です。今年は国際部門1036本、日本部門242本の応募がありました。日本部門の応募数はこれまでの最多本数です。この応募本数は他の国際観光映像祭と比較しても圧倒的に多く、世界屈指の規模となっています。
次に「 観光映像についてのシンポジウムの開催」です。観光映像の専門家と映像の応募者が、会場であるイコロシアターに集まり、観光映像の技術論や観光のあり方を議論します。今年はアイヌコタンで開催することもあって、少数民族と観光誘客との関係や、北海道の観光映像について語る場所を設けます。
そして最後に地域の魅力を発信する 「ファクトリー」も開催します。今年は協力自治体である鹿児島県与論町に3チーム、釧路市阿寒湖に2チームを送り、合計5チームによるコンペティションとなります。これもこれまでにない規模です。
ファクトリーはポルトガルの映像祭が2017年に全土を襲った山火事からの復興のために開催したもので、授賞式に集った世界からのトップクリエイターたちに、被害にあった地域の魅力を伝える映像を製作してもらったコンペティションでした。ここで生まれた映像は短期間で即興的に作られたにも関わらず素晴らしく、主催者の想像をはるかに超えて世界各地で受賞することとなりました。JWTFFはこのファクトリーを日本に持ち込み開催してきました。
今年は応募数もファクトリーも空前の規模です。この背景には日本における観光への期待ではないでしょうか?だからこそ今、観光映像のこれからのあり方を議論することが重要です。
前回の第5回日本国際観光映像祭は世界的なパンデミックの終わりが見えつつあった時期とはいえ、まだまだ限定的な開催でした。それにも関わらず、多くの映像作家が自身の映像について語るために来場され、授賞式にも在日本大使館から全権大使や総領事をはじめ、国内外から多くのゲストの参加がありました。観光映像に対する参加者の熱意はたいへんなものです。
今年はさらに私たちの予想を超えた、大きな規模の映像祭となります。私たちが想定していた予算では足りない、また これだけの期待と可能性が寄せられている映像祭をより効果的なものにしたいため、みなさまのご支援をお願いしたいのです。
そのために、Motion Galleryを通じてクラウドファンディングに挑戦しています。
ご支援いただきたいこと
今年の映像祭の基本的な経費は和歌山大学の予算、開催地、釧路市の公共団体や民間企業の協賛でまかなっています。しかし、今年の応募数とファクトリーの規模は事前の想定を超えており、みなさまのご支援が必要となりました。
ファクトリーは阿寒湖と与論島と2箇所で開催し、参加チーム数も増えました。このコーディネートについてより盤石なものとしたいです。製作した映像はより効果的としたいので海外の観光映像祭に出展して、海外のメディアやジャーナリストに届けたい。また、応募本数が増えたことにより、授与する賞の数も増えることになります。受賞者は世界各国、日本各地の映像作家や影響力のある人たちなので、その方々に滞在中、阿寒湖の魅力を知ってもらって発信してもらえるようエクスカーションもより充実したものとしたいと考えています。トロフィーも地元アイヌコタンの文化を反映したものを用意したいと考えています。
以上のために、みなさまからのご支援をたまわりたく、お願い申し上げます。
以下の画像をクリックしていただけると、クラウドファンドのサイトに飛びます。
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